モザイク・ぼかしは復元できる?
黒塗りとの違いと安全な使い分け
結論から書きます。条件がそろえば推測されることがあります。そして黒塗りは、その条件が原理的に成立しません。理由を順に説明します。
この記事は「隠した情報を取り出す方法」を説明するものではありません。何を選べば安全かを判断するための記事です。当サイトには復元・解除の機能はなく、その手順を紹介することもありません。
3つの隠し方は、やっていることが根本的に違う
ぼかし・モザイク・黒塗りは、見た目こそ「読めなくする」で共通していますが、画素に対してやっている計算はまったく別物です。
| 隠し方 | 画素に何をしているか | 元の情報 |
|---|---|---|
| ぼかし | 周囲の画素と混ぜ合わせて、境界をなだらかにする | 形を変えて残っている |
| モザイク | 一定の範囲の画素を平均して、1つの色に置き換える | 平均値として残っている |
| 黒塗り | 範囲内の画素を、指定した単色に置き換える | 残っていない |
ここが決定的な差です。ぼかしとモザイクは「元の情報を材料にして作った別の値」が残ります。黒塗りは「元の情報とまったく関係のない値」で上書きします。
なぜモザイクから内容が推測できてしまうのか
モザイクは、たとえば16×16ピクセルの範囲を平均して1つの色にします。この「平均した色」は、元の内容によって決まる値です。同じ場所に別の文字が書かれていれば、平均の色も変わります。
つまりモザイク後の画像は、元の内容についての手がかりを持っています。とくに、隠された内容の候補が限られている場合、この手がかりは強力です。
典型的なのが数字です。伏せられているのが4桁の数字だと分かっていれば、ありうる組み合わせは1万通りしかありません。同じフォント・同じ大きさで1万通りを作って、それぞれに同じモザイク処理をかけて見比べれば、平均の色の並びが一致するものを絞り込めます。これは特別な技術ではなく、単なる総当たりです。
文字列でも事情は同じです。等幅フォントで表示されたIDや、書式が決まっている電話番号・郵便番号・日付などは、候補が絞られるぶん危険が高くなります。
ぼかしも構造は同じです。ぼかしは「周囲と混ぜる」という計算なので、混ぜ方が分かっていれば、逆向きの計算を試すことができます。強度が弱く、画像に圧縮による劣化が少ないほど、この推測は成功しやすくなります。
実際に起きた話
この危険が現実のものだと広く知られるきっかけになったのは、2007年に国際刑事警察機構(インターポール)が公開した手配情報です。顔の部分が渦巻き状に加工された写真から、加工前の顔が再現され、人物の特定につながりました。加工した本人は「これで分からなくなる」と考えていたはずです。
この事例が示しているのは、「見た目に読めない」ことと「情報が失われている」ことは別だという一点です。人間の目に読めないことは、機械にも読めないことを意味しません。
では黒塗りはなぜ安全なのか
黒塗りは、指定した範囲の画素をすべて同じ色に書き換えます。書き換えたあとの画素には、元が何色だったかという情報が一切含まれません。
平均も混合もしていないため、逆算するための材料がありません。総当たりで候補を作っても、どの候補も同じ「真っ黒な四角」になるので、区別のしようがないのです。
これが、当サイトが「機密情報の墨消しは黒塗りが最も安全です」と書いている理由です。ただし、次の条件が満たされている場合に限ります。
- 塗った状態が画像そのものに焼き込まれていること。四角い図形を上に重ねただけで、下に元の画像が残っている状態は黒塗りではありません(この失敗はパワポでモザイクはかけられる?で詳しく扱っています)。
- 隠す範囲が十分であること。文字の一部がはみ出していれば、そこから推測されます。
使い分けの基準
とはいえ、すべてを黒塗りにすると資料が読めなくなります。実務では次のように分けると判断しやすくなります。
| 隠す対象 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| 氏名・住所・電話番号・メールアドレス | 黒塗り | 書式が決まっており候補を絞りやすい |
| 口座番号・カード番号・パスワード・APIキー | 黒塗り | 漏れた場合の被害が回復不能 |
| 顔・車のナンバー | 黒塗り | 推測の材料が多く、影響が本人に及ぶ |
| ダミーであることを示したい金額・件数 | モザイク | 読まれても実害がなく、表の形が残る |
| 背景に写り込んだ無関係な情報 | ぼかし | 存在は示しつつ注意をそらせる |
モザイクを使う場合は、粗さを十分に取ってください。1文字が2〜3セルに収まるような細かいモザイクは、ほとんど意味がありません。目安として、1文字がまるごと1セルに収まる程度の粗さが最低ラインです。カクスルでは、読み込んだ画像の大きさから「文字が判読できなくなる側」に寄せた粗さを最初から入れてあります。
やってしまいがちな失敗
- 加工前のファイルを一緒に送ってしまう:もっとも多い事故です。加工結果がどれだけ完璧でも、元ファイルが添付されていれば意味がありません。
- PDFで文字の上に黒い四角を置く:見た目は黒塗りですが、下の文字データは残っています。文字を選択してコピーすれば読めてしまいます。PDFで隠す場合は、画像化するか、専用の墨消し機能を使ってください。
- 同じ画像を、隠し方を変えて2回公開する:モザイクの位置や粗さが違う2枚があると、突き合わせによって情報が増えます。差し替えるときは前の画像を確実に取り下げてください。
- スクロールバーや文字数から推測されることを見落とす:隠した部分の幅そのものが情報です。桁数を知られたくない場合は、少し広めに塗ってください。
まとめ
「モザイクは復元できるのか」への答えは、「処理の性質上、推測される可能性がある。だから重要な情報には使わない」です。絶対に復元できないと言い切れる方法はありませんが、黒塗りは元の情報を保持しないため、推測のしようがありません。
迷ったら黒塗り。読みやすさのためにモザイクを選ぶときは、実害がない情報に限る。この2つを守るだけで、事故の大半は防げます。
カクスルで黒塗り・モザイク・ぼかしを試す ブラウザだけで完結。画像はアップロードされません。最終更新:2026年08月12日